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じゃしゅうもん
邪宗門
「東京日日新聞」1918(大正7)年10~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,184 字 · 79 页
かような次第でございますから、元より御文が無事に御手許にとどいても、とんと御返事と申すものは頂けません。が、若殿様は、一向それにも御頓着なく、三日にあげず、御文やら御歌やら、あるいはまた結構な絵巻やらを、およそものの三月あまりも、根気よく御遣しになりました。さればこそ、日頃も仰有る通り、「あの頃の予が夢中になって、拙い歌や詩を作ったのは、皆恋がさせた業じゃ。」に、少しも違いはなかったのでございます。
九
丁度その頃の事でございます。洛中に一人の異形な沙門が現れまして、とんと今までに聞いた事のない、摩利の教と申すものを説き弘め始めました。これも一時随分評判でございましたから、中には御聞き及びの方もいらっしゃる事でございましょう。よくものの草紙などに、震旦から天狗が渡ったと書いてありますのは、丁度あの染殿の御后に鬼が憑いたなどと申します通り、この沙門の事を譬えて云ったのでございます。
そう申せば私が初めてその沙門を見ましたのも、やはり其頃の事でございました。確か、ある花曇りの日の昼中だったかと存じますが、何か用足しに出ました帰りに、神泉苑の外を通りかかりますと、あすこの築土を前にして、揉烏帽子やら、立烏帽子やら、あるいはまたもの見高い市女笠やらが、数にしておよそ二三十人、中には竹馬に跨った童部