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じゃしゅうもん
邪宗門
「東京日日新聞」1918(大正7)年10~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,184 字 · 79 页
たのが横柄に簾を払って、「どうじゃ。この殿に違いはあるまいな。」と、仲間の方を振り向きながら、念を押したそうでございます。その容子がどうも物盗りとも存ぜられませんので、御驚きの中にも若殿様は不審に思召されたのでございましょう。それまでじっとしていらっしったのが、扇を斜に相手の方を、透かすようにして御窺いなさいますと、その時その盗人の中に嗄れた声がして、
「おう、しかとこの殿じゃ。」と、憎々しげに答えました。するとその声が、また何となくどこかで一度、御耳になすったようでございましたから、愈怪しく思召して、明るい月の光に、その声の主を、きっと御覧になりますと、面こそ包んで居りますが、あの中御門の御姫様に年久しく御仕え申している、平太夫に相違はございません。この一刹那はさすがの若殿様も、思わず総身の毛がよだつような、恐ろしい思いをなすったと申す事でございました。なぜと申しますと、あの平太夫が堀川の御一家を仇のように憎んでいる事は、若殿様の御耳にも、とうからはいっていたからでございます。
いや、現にその時も、平太夫がそう答えますと、さっきの盗人は一層声を荒げて、太刀の切先を若殿様の御胸に向けながら、