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じゃしゅうもん

邪宗門

芥川 竜之介

「東京日日新聞」1918(大正7)年10~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,184 字 · 79 页

青空文庫

「それは重畳じゃ。何、予が頼みと申しても、格別むずかしい儀ではない。それ、そこに居る老爺は、少納言殿の御内人で、平太夫と申すものであろう。巷の風聞にも聞き及んだが、そやつは日頃予に恨みを含んで、あわよくば予が命を奪おうなどと、大それた企てさえ致して居ると申す事じゃ。さればその方どもがこの度の結構も、平太夫めに唆されて、事を挙げたのに相違あるまい。――」

「さようでございます。」

これは盗人たちが三四人、一度に覆面の下から申し上げました。

「そこで予が頼みと申すのは、その張本の老爺を搦めとって、長く禍の根を断ちたいのじゃが、何とその方どもの力で、平太夫めに縄をかけてはくれまいか。」

この御仰せには、盗人たちも、余りの事にしばらくの間は、呆れ果てたのでございましょう。車をめぐっていた覆面の頭が、互に眼を見合わしながら、一しきりざわざわと動くようなけはいがございましたが、やがてそれがまた静かになりますと、突然盗人たちの唯中から、まるで夜鳥の鳴くような、嗄れた声が起りました。

「やい、ここなうっそりどもめ。まだ乳臭いこの殿の口車に乗せられ居って、抜いた白刃を持て扱うばかりか、おめおめ御意に従いましょうなどとは、どの面下げて申せた義理じゃ。