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じゃしゅうもん

邪宗門

芥川 竜之介

「東京日日新聞」1918(大正7)年10~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,184 字 · 79 页

青空文庫

」

こう仰有られて見ますと盗人たちも、今更いやとは申されません。そこで一同うち揃って、雑色がわりに牛を追いながら、縄つきを中にとりまいて、月夜にぞろぞろと歩きはじめました。天が下は広うございますが、かように盗人どもを御供に御つれ遊ばしたのは、まず若殿様のほかにはございますまい。もっともこの異様な行列も、御屋形まで参りつかない内に、急を聞いて駆けつけた私どもと出会いましたから、その場で面々御褒美を頂いた上、こそこそ退散致してしまいました。

十六

さて若殿様は平太夫を御屋形へつれて御帰りになりますと、そのまま、御厩の柱にくくりつけて、雑色たちに見張りを御云いつけなさいましたが、翌朝は々あの老爺を、朝曇りの御庭先へ御召しになって、

「こりゃ平太夫、その方が少納言殿の御恨を晴そうと致す心がけは、成程愚には相違ないが、さればとてまた、神妙とも申されぬ事はない。殊にあの月夜に、覆面の者どもを駆り催して、予を殺害致そうと云う趣向のほどは、中々その方づれとも思われぬ風流さじゃ。が、美福門のほとりは、ちと場所がようなかったぞ。ならば糺の森あたりの、老木の下闇に致したかった。