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じゃしゅうもん

邪宗門

芥川 竜之介

「東京日日新聞」1918(大正7)年10~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,184 字 · 79 页

青空文庫

が、このような事は殿様に申上げても、あの通りの御気象ですから、決して御取り上げにはならないのに相違ありません。そこで、私は私の一存で、あの沙門を姫君の御目にかかれないようにしようと思うのですが、叔父さんの御考えはどういうものでしょう。」

「それはわしも、あの怪しげな天狗法師などに姫君の御顔を拝ませたく無い。が、御主もわしも、殿様の御用を欠かぬ限りは、西洞院の御屋形の警護ばかりして居る訳にも行かぬ筈じゃ。されば御主はあの沙門を、姫君の御身のまわりに、近づけぬと云うたにした所で。――」

「さあ。そこです。姫君の思召しも私共には分りませんし、その上あすこには平太夫と云う老爺も居りますから、摩利信乃法師が西洞院の御屋形に立寄るのは、迂闊に邪魔も出来ません。が、四条河原の蓆張りの小屋ならば、毎晩きっとあの沙門が寝泊りする所ですから、随分こちらの思案次第で、二度とあの沙門が洛中へ出て来ないようにすることも出来そうなものだと思うのです。」

「と云うて、あの小屋で見張りをしてる訳にも行くまい。御主の申す事は、何やら謎めいた所があって、わしのような年寄りには、十分に解し兼ねるが、一体御主はあの摩利信乃法師をどうしようと云う心算なのじゃ。