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じゃしゅうもん
邪宗門
「東京日日新聞」1918(大正7)年10~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,184 字 · 79 页
殊にその煙の末が、所斑な天の川と一つでいるのを眺めますと、どうやら数え切れない星屑が、洛中の天を傾けて、一尺ずつ一寸ずつ、辷る音まではっきりと聞きとれそうに思われました。
その中に私の甥は、兼ねて目星をつけて置いたのでございましょう、加茂川の細い流れに臨んでいる、菰だれの小屋の一つを指さしますと、河原蓬の中に立ったまま、私の方をふり向きまして、「あれです。」と、一言申しました。折からあの焚き捨てた芥火が、まだ焔の舌を吐いているそのかすかな光に透かして見ますと、小屋はどれよりも小さいくらいで、竹の柱も古蓆の屋根も隣近所と変りはございませんが、それでもその屋根の上には、木の枝を組んだ十文字の標が、夜目にもいかめしく立って居ります。
「あれか。」
私は覚束ない声を出して、何と云う事もなくこう問い返しました。実際その時の私には、まだ摩利信乃法師を殺そうとも、殺すまいとも、はっきりした決断がつかずにいたのでございます。が、そう云う内にも私の甥が、今度はふり向くらしい容子もなく、じっとその小屋を見守りながら、
「そうです。」と、素っ気なく答える声を聞きますと、愈太刀へ血をあやす時が来たと云う、何とも云いようのない心もちで、思わず総身がわななきました。