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じゃしゅうもん

邪宗門

芥川 竜之介

「東京日日新聞」1918(大正7)年10~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,184 字 · 79 页

青空文庫

「その方どもの罪業は無知蒙昧の然らしめた所じゃによって、天上皇帝も格別の御宥免を賜わせらるるに相違あるまい。さればわしもこの上なお、叱り懲そうとは思うて居ぬ。やがてはまた、今夜の闇討が縁となって、その方どもが摩利の御教に帰依し奉る時も参るであろう。じゃによってその時が参るまでは、一先この場を退散致したが好い。」と、もの優しく申してくれました。もっともその時でさえ、非人たちは、今にも掴みかかりそうな、凄じい気色を見せて居りましたが、これもあの沙門の鶴の一声で、素直に私どもの帰る路を開いてくれたのでございます。

そこで私と甥とは、太刀を鞘におさめる間も惜しいように、々四条河原から逃げ出しました。その時の私の心もちと申しましたら、嬉しいとも、悲しいとも、乃至はまた残念だとも、何ともお話しの致しようがございません。でございますから河原が遠くなって、ただ、あの芥火の赤く揺めくまわりに、白癩どもが蟻のように集って、何やら怪しげな歌を唄って居りますのが、かすかに耳へはいりました時も、私どもは互の顔さえ見ずに、黙って吐息ばかりつきながら、歩いて行ったものでございます。