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ごうすけほうし

郷介法師

国枝 史郎

「ポケット」1925(大正14)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,163 字 · 21 页

青空文庫

「とは云え殿下のご威光までがそのため損つきはしますまいか?」

「馬鹿を云え」と秀吉は云った。

「そんな事ぐらいで損つく威光なら、それは本当の威光ではない」

「いよいよ遣わすのでござりますか?」

まだ利休には未練がある。

「賊に茶碗を望まれて、そいつを俺がくれてやったと知れたら、俺の方が大きく見られる。……それに俺にはその泥棒がちょっと恐くも思われるのだ」

「殿下が賊をお恐れになる?」

利休はますます吃驚する。

「世間で何が恐ろしいかと云って、我無洒羅な奴ほど恐ろしいものはない」

「ははあ、ごもっともに存じます」

利休は始めて胸に落ちたのである。

大阪市外阿倍野の夜は陰森として寂しかった。と、数点の松火の火が、南から北へ通って行く。同勢百人足らずである。それは晩秋深夜のことで寒い嵐がヒュー、ヒューと吹く。斧を担ぎ掛矢を荷い、槍薙刀を提げた様子は将しく強盗の群である。

行手にあたって十八九の娘がにわかに胸でも苦しくなったのか、枯草の上に倒れていた。夜眼にも美しい娘である。

「や、綺麗な娘ではないか」

「こいつはとんだ好い獲物だ」

「それ誰か引担いで行け」

盗賊共は大恭悦で娘を手籠めにしようとした。