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きょうどてきみかく
郷土的味覚
寺田 寅彦
「郷土読本」高知市江ノ口小学校、1932(昭和7)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,946 字 · 6 页
高等学校時代に夏期休暇で帰省する頃にはもういつも盛りを過ぎていた。「二、三日前までは好いのがあったのに」という場合がしばしばあった。「お銀がつくった大ももは」という売声には色々な郷土伝説的の追憶も結び付いている。それから十市の作さんという楊梅売りのとぼけたようで如才のない人物が昔のわが家の台所を背景として追憶の舞台に活躍するのである。
大正四、五年頃、今は故人となった佐野静雄博士から伊豆伊東の別荘に試植するからと云って土佐の楊梅の苗を取寄せることを依頼された。郷里の父に頼んで良種を選定し、数本の苗を東京へ送ってもらった。これがさらに佐野博士の手で伊東に送られ移植された。そしてこの苗の生長を楽しみにしておられた博士は不幸にして夭折されたのである。亡くなられる少し前に、たしかこれらの楊梅が始めて四つとか五つとかの実を着けたという消息を聞いたことがあったように思う。その後さらに数年を経過した現在のこの楊梅の苗の運命がどうなっているか。伊東へ行く機会があったら必ず訪ねてみようと思うものの一つにはこの楊梅のコロニーがあるのである。
色々の木の実を食ったことを想い出す。