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とかいのなかのことう
都会の中の孤島
「小説新潮 第七巻第四号」1953(昭和28)年3月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,205 字 · 27 页
しかし、実際はグズ弁がギセイになることはめッたにない。なぜなら、彼自身がそういうハメになり易いことを生れながらに知っていて自然に防ごうと努めている強烈な本能があるからで、そのオドオドした本能のために一そうグズに見えたけれども、その本能と用心があるために、実際に被害をうけることは殆どなかったし、また被害をうけた場合には、誰一人知らないうちにそれを補充して何食わぬ顔をしている天分があった。誰もその天分を知らなかった。なぜなら、そういうことのできないグズだと思いこんでいたからである。彼はグズだと思われ易いことを活用する本能すらも持っていた。
それは一見カメレオンの変色本能のように素朴なものに見えるが、人間の場合に於ては実は非常に高級な才能なのかも知れないのである。
彼はミヤ子に真剣に惚れて、本当に結婚したいと熱望していたので、彼のグズのベールの下の才能は誰にも秘密にめざましく活動しはじめていた。
そしてミヤ子のホンモノの情夫が誰であるかということすらも、彼がまッさきに突きとめていたのである。
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半年ぐらい前まで、この店へ時々オデンを食べに来ていたアルバイトの学生があった。