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とかいのなかのことう

都会の中の孤島

坂口 安吾

「小説新潮 第七巻第四号」1953(昭和28)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,205 字 · 27 页

青空文庫

★

ミヤ子はグズ弁が結婚を懇願するたびに、

「そうねえ。あんたは頼りになる人だし、あんたと結婚したいと思うけど、右平さんが同じように熱心でしょう。あんたと一しょになれば、たぶん私たち二人とも右平さんに殺されちゃうわよ。今だって、あんたが邪魔だと思うから、あんたを殺して私を独占しようと考えているらしいもの」

彼女はこう云う。そして、つけ加える。

「あの右平さんさえいなければ、あんたと一しょになれるのにねえ」

そして、アアア、と溜息をもらして見せたりするのであった。

中井の存在が分らぬうちは、この言葉もグズ弁の耳には、まことになつかしく、悲しく、やるせなく、きこえた。だが、中井という存在が分ってみれば、およそこれは人を食った文句ではないか。

ミヤ子は結婚ができない理由として、右平が二人を殺すであろうということと、そうでなくとも右平はグズ弁を消すために狙っているということを強調するのであった。そして溜息をもらして、もしも右平さえ居なければあんたと一しょになれるのに、といかにも切なく云うのであったが、それが彼女のいつものキマリ文句であるところを見れば、恐らく右平が結婚の申込みをするたびに、彼にも同じキマリ文句で返事をしているに相違ない。