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とかいのゆうき
都会の幽気
豊島 与志雄
「サンデー毎日」1924(大正13)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,559 字 · 21 页
其他さまざまの人の姿が、湿気を帯びた黴臭い室の空気の中に、茫とした気配に浮出して、四方から私の方を覗き込んでき、私の身体にとっつこうとする。私は首と手足とを縮こめて、蒲団の中に円くなり、もう寝返りをするのも恐ろしくて、じっと夜明けを待ちながら、自分の呼気で自分を中毒さして眠ろうと努めた。
そして翌日になったが、いつまでも日の光がさして来なかった。陰欝などんよりとした曇り日らしい明るみが、窓の雨戸の隙間から忍び込んでいたけれど、いつまで待っても同じ茫とした明るみだった。私は思い切って起き上ってみた。驚いたことにはもう十時を過ぎていた。顔を洗って冷たい食事を済したが、北に窓がついてるきりの室の中には、隅々に薄暗い影が漂っていて、何かぼんやりつっ立ってるような気配だった。私はじっとしてることが出来ずに、何処という当もなく、外出しかけた。お上さんが玄関へ出て来て、どうでしたかというような眼付を見せたが、私は眼を外らして答えないで、ぷいと表に飛び出した。
雲ともいえない靄みたいなものが、空低く一面に蔽い被さっていて、空気が重くどんよりと淀んでいた。寂しい裏通りのそこいらの影から、彼奴らがふらふらと浮び出てくるのに、最もふさわしい天気だった。