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しゅうぶん

醜聞

山本 周五郎

「小説新潮」新潮社、1964(昭和39)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,900 字 · 46 页

青空文庫

さくらは憑きものでもおちたように、話をやめて功兵衛を見、あんたはあたしの云うことを聞いていなかったんだね、と云い、屹と身を起こして坐り直そうとした。しかし却って躯の重心が崩れ、だらしなく横倒しになった。聞いていなかったのかい、ひとをばかにするんだね。そんなことを云いながら、起きあがろうとして手足をもがいた。着物の裾が捲れ、太腿まであらわになったが、不健康に青白く、むくんだような太腿は、腐りかかった魚の腹のように醜くぶきみで、功兵衛は眉をしかめながら眼をそむけた。

「はあわかった」あぶない恰好で、ようやく起きあがったさくらは、片手で躯を支え、片手で口のまわりを拭きながら云った、「おまえさんあたしを殺すつもりだね、それで吾平のことが気になるんだろ、そうだろう」

「金が欲しいならおまえ一人ではだめだ、吾平と二人そろったところで渡そう」

「いいとも、吾平も伴れて来るさ」さくらはもう舌がよくまわらなくなっていた、「――あたしはここまでおちぶれたんだ、おどしをかけられたってこわいものなんかありゃあしないんだから、吾平がどこにいるかだって、へ、明日の晩ここへ来てみればわかるさ、そっちでそんな注文をつけるんなら金は五十両だよ」