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じゅうびょうしつにっし

重病室日誌

北条 民雄

「文學界」1937(昭和12)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,745 字 · 14 页

青空文庫

夜は例のやうに眠れず、午前二時まで正岡子規の随筆を読む。なんといふ激しい愚痴であらう。

×月×日。

今朝は大変に睡かつた。

朝食後ぼんやりした気持でベッドの上に坐り窓外を眺めてゐると、突然死亡通知の鐘の音が聴え出す。誰か死んだのだ。考へて見ると一ヶ年のうち正月二月が死亡が一番多い。地球が冷えるからかも知れぬ。九時頃、屍体を乗せたタンカが窓下を通つて行つた。

夜、李さんが独言のやうに、乾性はいいなあ、今度生れて来る時にも、俺ァ乾性に生れて来る、湿性になりや体はどろどろに頽れやがるし眼は見えなくなるし……と言ひ出す。彼は勿論湿性である。

「なんだ、李さんは生れ更つてからも癩病になりたいんかい。」

と誰かが応へると、

「だつてお前、毛虫の子は毛虫つてことがあるぢやねえか。ライピョの子は、なんべん生れ更つたつてライピョに定つてらあ。」

それから彼は首を垂れて暫く考へ込んでゐたが、

「俺ァ考へた。人間も、そこらにゐる蝶々か虫とおんなじもんだ。さなぎになつて一年か半年眠つてて、また生れ更つて来るんだ。死ぬ時苦しむのはたましひが体から離れるからで、死んじまやあ苦しかねえだ。