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ななこ

野菊の墓

伊藤 左千夫

伊藤左千夫『野菊の墓』。同一底本的分册已合并为一书。收入:奈々子、隣の嫁、春の潮。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 71,271 字 · 144 页

青空文庫

母までが端近に出て来てみんなの話にばつを合わせる。省作がよく働きさえすれば母は家のものに肩身が広くいつでも愉快なのだ。慈愛の親に孝をするはわけのないものである。

「今日明日とみっちり刈れば明後日は早じまいの刈り上げになる。刈り上げの祝いは何がよかろ、省作お前は無論餅だなア」

そういうのは兄だ。省作はにこり笑ったまま何とも言わぬうち、

「餅よりは鮓にするさ。こないだ餅を一度やったもの、今度は鮓でなけりゃ。なア省作お前も鮓仲間になってよ」

「わたしはどっちでも……」

「省作お前そんなこと言っちゃいけない。兄さんと満蔵はいつでも餅ときまってるから、お前は鮓になってもらわんけりゃ困る。わたしとおはまが鮓で餅の方も二人だから、省作が鮓となればこっちが三人で多勢だから鮓ときまるから……」

省作は相変わらず笑って、右とも左とも言わない。満蔵はお祖母さんが餅に賛成だという。姉はお祖母さんは稲を刈らない人だから、裁決の数にゃ入れられないという。各受け持ちの仕事は少しも手をゆるめないで働きながらの話に笑い興じて、にぎやかなうちに仕事は着々進行してゆく。省作が四挺の鎌をとぎ上げたころに籾干しも段落がついた。