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きんごじゅうりょう
金五十両
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1947(昭和22)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,843 字 · 23 页
それでもまだ絶望はしなかった。主人の娘は自分の味方だ、ゆく末の約束もある、話せばきっと証しを立てて呉れるだろう、……逢えさえすればと機会を覘ったが、それを知って避けるように、出ることの好きなおたまがまったく外へ姿を見せない、彼は餓えた犬のように夜も昼も店のまわりをうろついた。
「間もなく帰って来た清吉と逢った、清吉は小料理屋へ誘いこんで、なにもかも番頭とその仲間の手代たちの悪企みだと云った、抜商いをしていたのは実は彼等で、偶たま露顕しそうになったのですっかりこっちへ押付けたのだという。
……いまにおれが動かない手証を押えてあいつらを逐出したうえ、おまえをきっと店へ戻れるようにするから、清吉はこう約束をした、そして当分のあいだ自分の仕事の手伝いをして呉れ、決して困るようなめにはあわせない。
……藁にでも縋りたい気持の時だった、おれは清吉の云うことを頭から信じこみ、ついおたまとのことまで打明けてしまった、ばかもここまでくると底無しだ。
相手は猫撫で声でそれも引受け、いつかおたまさんとも逢えるようにしてやろう、夫婦になる手助けもしようと神文誓紙を書かない許りに云って呉れたものさ」