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きんぞくにんげん

金属人間

海野 十三

「サイエンス」1947(昭和22)年12月~1949(昭和24)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 78,616 字 · 157 页

青空文庫

異様な黒い箱だけが、ふたりの手にのこった。

黒箱の謎

「うーん、ざんねん。うまく逃げられてしまったわい」

長戸検事は、大通りのヤナギのかげで汗をふきながら、そういった。とり逃がした怪人物をあきらめたようなことをいいながらも、まだかれの目は往来へいそがしく動いていた。

「きょうは逃がしても、そのうちにきっとつかまりますよ」

蜂矢探偵が、検事をなぐさめた。

「そうだ。とにかく、彼奴はこのへんですがたを消したんだから、どこかこの近くに巣くっているのにちがいない。ああ、そうだ。怪人物がおとしていった黒箱を、ちょっとしらべてみよう。こっちへだしたまえ」

その黒箱は、さっきから蜂矢が検事からあずかって、こわきに抱いていたのだ。それは木の箱だった。しかしかなり重いところをみると、中に金属製の何物かがはいっているにちがいない。

「どこかあくんだろうが、どうしたらいいだろうかね」

検事は、こういうことになると、いつも手をやく方であった。そこで蜂矢のたすけをもとめる。

「さあ、どこがあくんですかな」

蜂矢もその場にしゃがんで、黒箱をいろいろといじってみる。なかなかあかなかったけれど、蜂矢がその黒箱の板の節穴に小指を入れてみたときに、きゅうに箱がばたんとはねかえり、四方の枚がはずれた。