轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

きんざんそうわ

金山揷話

大鹿 卓

「中央公論」1939(昭和14)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,736 字 · 22 页

青空文庫

彼等はしばらく顔を見合せていたが、そのうちの一人が深刻な顔をして「いや、現金でいただきたい」と口を切った。「住友ともあろうものが、お渡しする小切手に間違いがあろう筈もなし、当方ではあなた方の御便宜のために申し上げているのです。札幌の銀行で受取れるようにすればいいわけでしょう」「いや、私達はどうしても現金を持って帰りたい」そんな経緯があって住友の当事者には彼等のつきつめた心情を理解する心がなかったのであろう。恐らくやや中腹になったらしく、全額を十円札で支払ったということである。百万円に近い金額が十円札でどれほどの嵩になるものか、私は知らない。柳行李に何杯だったかも聞き忘れた。

その鉱山は、その後採鉱方針よろしきを得て予想外の繁栄をきたし、ここ数年来産金額も九州の鯛生を抜き、国内第一の金山になっている。ともかくも、売った方も買った方も、共に幸運をつかんだといえるであろうが、ただ二束の札を握ってここに哀れをとどめたのは、宿屋の亭主である。彼は梯子段から転げ落ちた際の打ち所が悪かったのか、床に就いたなり再び立つことができず、遂に果無い最期をとげてしまったという。