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きんどけい
金時計
泉 鏡花
「侠黒兒」少年文學、博文館、1893(明治26)年6月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,568 字 · 12 页
「どうぞお見逃しを願います。」
少年は打笑いつつ、
「何、突出しやせん。汝はなかなか熟練たものだ。」
「飛んだことをおっしゃいます。」
「いやその手腕を見込んで、ちっと依頼があるのだ。」
大助は愕然として若様の面を瞻りぬ。
「この懐中物もやろう。もっと欲くばもっと遣ろう。依嘱というのは、そらあすこへ行く、あの、な、」
とへいげんを指して、
「彼奴の持っている時計を掏ってくれんか。」
その意を得ざる掏摸は、ただへいへいと応うるのみ。
大助は驚きて、
「ええ、若様滅相な。」
「いや少し了簡があるのだ。」
拘摸は事も無げに頷きて、
「じゃあの金時計ですね。」
「汝知ってるのか。」
「そりゃちゃんと睨んであります。あんな品は盗っても、売るのに六ヶしいから見逃がして置くものの、盗ろうと思やお茶の子でさあ。」
「いや太々しい野郎だなあ。」
と大助は呆然たり。
「汝も聞いたろう、あの長谷の草刈騒動を。」
「知ってる段ですか。」
三郎は告ぐるに実をもってすれば、
「へえあの毛唐が!」
と掏摸だになお憤慨の色を表わせり。
「若様此奴は離すと、直に逃げてしまいますよ。」
「こう、情無いことを謂いなさんな。