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きんいろのあきのくれ
金色の秋の暮
宮本 百合子
「サンデー毎日」1927(昭和2)年1月1日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,808 字 · 4 页
九品仏は今は殆ど廃寺に等しい。本堂の裏に三棟独立した堂宇があり、内に三対ずつの仏像を蔵している。徳川時代のものだろうか。もう暗いので、朧に仏像の金色が見えただけ、木像、光背も木。余り立派な顔の仏でないようだ。境内宏く、古びた大銀杏の下で村童が銀杏をひろって遊んでいる。本堂の廊から三つの堂を眺めた風景、重そうな茅屋根が夕闇にぼやけ、大銀杏の梢にだけ夕日が燃ゆる金色に閃いているのは、なかなか印象的であった。いかにも関東の古寺らしく、大まかに寂び廃れた趣きよし。関西の古寺とは違う。雰囲気が。
小僧夕方のお勤め。木魚の音。やがて背のかがんだ年よりの男が別な小僧をつれて出て来、一方の大きい浅草観音のと同じ扉をギーとしめ、こっちに来て賽銭箱をあけ初めた。紺絣に白木綿の兵児帯をぐるぐる巻きにした小僧、笊をもってこぼれる銭をあつめる。畳の上へ賽銭箱をバタン、こっちへバタンと引っくりかえすが出た銅貨はほんのぽっちり。今度は正面の大賽銭箱。すのこのように床にとりつけてある一方が鍵で開くらしい。年よりの男が大きい昔ながらの鍵をガチャガチャ鳴らしてあちら向きに何かしている。