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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

13 宙に浮く屍骸

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,907 字 · 32 页

青空文庫

親分さん、お力で仇敵を取って下さいますようお願い申し上げます。」

「うむ。」藤吉は首肯いて初太郎へ、「お前ら二人とも、この外の軒先に、お美野さんが吊る下ってるのを見たてえのだな。それが、ふたりが二階へ上って来る間に、部屋の真ん中に引き上げられていた――。」

「そのとおりでございます。」

初太郎と宇之吉が、ごくりと生唾を飲み込んで、一緒に合点合点をすると、藤吉の笑い声が、やにわに彦兵衛へ向けられた。

「やい、彦。屍骸が自力で、綱を伝わって上ったとよ。あんまり聞かねえ話さのう。」

七

「けっ! 面白くもねえ、大方二階から、綱を手繰ったやつがあるんだんべ。」

「きまってらあな。」勘弁勘次が口を尖らせて、「引っ張り上げておいて、縁から庭へ飛んで逃亡かったんですぜ、ねえ親分。」

「ま一度ちょっくら、仏を拝ませておくんなせえ。」

藤吉はそう言って、お美野の死体の傍に躙り寄ると、はじめ一応検た時と同じように、ちょっと申訳にちらと頸筋を拭いて手をやってみたのち、それから、死体の首に結んであった細引きを両手に扱きながら、何か、考えていたことを確かめ得たものか急に藤吉、水を噴くように上を向いて笑い出した、晴ればれとした、小児のような微笑である。