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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
13 宙に浮く屍骸
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,907 字 · 32 页
非常に身長の高い女で、よく言えばすらりとした、悪くいえば半鐘泥棒式の、しかし、前身が前身だけにいまだに凄いような阿娜者だったが、このお美野にかぎって、若後家にもかかわらず、またこうした人出入りの激しい客稼業にも似合わず、浮いたうわさなぞついぞ立ったことがないのだった。
前夜、十四日の真夜中、丑の下刻とあるから八つ半、いまで言う午前三時ごろだった。
この大鍋の階下の一室に宿泊していた、武州小金井の穀屋の番頭で初太郎というのが、なにかしらほとほとと雨戸を叩く音で眼を覚ました――。
と、言いさして、に組の頭常吉は、まだ薄暗い合点長屋の土間口に押し並んだ藤吉、勘次、彦兵衛の顔を、探るように見廻している。事件出来とみて、紙屑拾いに出かけようとしていた葬式彦も引き留められ、勘次は、あわてふためいている常吉を案内して広くもない玄関へ通すと、破れ半纏をひっかけた藤吉親分が、鳩尾の釘抜の文身をちらちらさせて、上り框にしゃがんでいたのだった。片方に荒塩を盛って房楊子を使いながら、
「朝あ結構冷えるのう。」と、じろりに組を見上げて、「のう常さん、知ってのとおり、おらあ気が短えんだ。