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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

04 槍祭夏の夜話

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,085 字 · 21 页

青空文庫

「与惣さん。」勘次が上り框から声をかける。「先刻小太郎が見えてね、戸が締ってて、いねえようだからって先へ行きやしたよ。」

「あ、眠ってたもんだから、つい――。」

「お前さん槍祭あすっぽかしけえ?」

「へ?」

「槍祭よ。明日あ王子の槍祭じゃねえか。どうした。出ねえのかよ?」

「へえ――あそうそう、なに、これからでも遅かあげえせん。では一つ――。」

与惣次は腰を浮かした。すぐにも小太郎の跡を追う気と見える、その膝の上へ手を置いて、釘抜藤吉は冷やかに言った。

「まあさ、与惣公、待ちねえってことよ。これ、大枚の謝礼を受けたに、そう慌てくさって稼ぐがものもなかろうじゃねえか。おう、それよりゃあこの手紙だ、読んでやるから、さ、しっかり聞きな。」

三

「この文御覧のころはわたしども夫婦はおしりに帆上げたあとと思召し被下度以下御不審を晴さむとてかいつまみ申述候大手住にてお前さんをお見かけ申しあまり夫と生うつしなるまま夫の窮場を救わんとの一芝居打ちお前さんをくわえこみ夫の手をかりて妖薬をあたえかみの毛をあたって死んだと見せ夫の身代に相立申候段重々不相済とは存候共これひとえに夫なる卍の富五郎を落しやらんわたしのこんたん必ずおうらみ被下間敷ただただ合掌願上奉候金子些少には候えども一夜の悪夢の代としてなにとぞお納め被下度尚当夜あたり