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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

03 三つの足跡

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,625 字 · 26 页

青空文庫

のを見ると、引寄せられるように歩を進めてぴたりと橋の欄干へ倚った。

「なんだ、ありゃあ?」

勘次も凝視めた。剥げちょろの、黒塗りの小舟のように見える。なかの一艘はことに黒い。

「勘、この川底あ浚ったろうのう。」

「へえ。」と勘次は弥造で口を隠したまま、「八州屋のこってげすけえ?」

「俺が訊いてるんだ。」

「へえ、上から下まで浚えやした、彦の野郎が采配振って。」

「彦の仕事ならぬかりゃあねえはず。勘、石を抛れ。舟までとどくか。」

橋際へ引き返して拾って来た小石を、勘次は力一杯に投げた。橋と舟との中間に小さな水煙りが立つと見る、その音に驚いてか、たちまち舟から舞い上るおびただしい烏の群、鳴き交す声は唖として甍に響き空低く一面に胡麻を散らしたよう――後には小舟が白く揺れているばかり。

「烏か。」

「あい。」

「小魚でも集りやがったか。」

「あい。」

「勘、冷えるのう。行くべえ。」

歩き出した二人の鼻先に、留守番の筈の葬式彦兵衛が小僧を一人連れて、いつの間にか煙のように立っていた。

「お、お前は彦、今時分何しにここへ――?」

「親分、お迎えに参りやした。」

と彦兵衛はにやにや笑って、