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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

06 巷説蒲鉾供養

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,319 字 · 29 页

青空文庫

彦が支えた。藤吉はいざり寄る。「お、お、親分か――よ、黄泉の障りだ、き、聞いてくれ――。」

片息ながら平兵衛の話した一伍一什。

世の中の事はすべて落日になる時は仕方のないもので、あれほど仲のよかった女房のおりんとも何かにつけぶつかる日が多かったが、五月末季のある夕ぐれ、商売上の些細なことから犬も食わない立廻りのあげく、打ちどころでも悪かったものか、おりんは平兵衛の振り上げた仕事用の砧の下に、未だ生きていたい現世に心をのこして去ったのだった。

驚き慌てた平兵衛、哭き悲しんでみたが、さてどうにもならない。それが、おりんの死体の処理という現実の問題に直面して、彼はいっそう困じ果てたのであった。

この時、思い出したのが背戸の古井戸。

いったい、平兵衛の代になってからいろいろの災厄が磯屋の家へふりかかってきた所以のものは、一に、先代の死後間もなく彼が誤って掘らしめた暗剣殺に当る背戸口の井戸にあると、自分では固く信じていた。だから方位が悪いと気がつくや否や、大部分出来上った工事を中止させて、家の傍の小路端にあった道六神の石塔を、自身担いで来て、穴を塞ぎ、その上から土を被せてようやく安心したくらいであった。