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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
07 怪談抜地獄
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,998 字 · 32 页
」
関西生れの養母は店の誰彼となくこう話し合っては、真からおかしそうに笑い崩れていた。
寺島村の寮は一、二度尋ねてすぐに解った。
河内屋という、下谷の酒問屋の楽隠居が有っているもので、木口も古く屋台も歪んだというところから、今は由緒ある御浪人へ預け切りで、自分は近所の棟割りの一つに気の置けない生計を立てているとのことだった。
何の変哲もない、観たところ普通の、如何にも老舗の寮らしい、小梅や寺島村にはざらにある構えの一つに過ぎなかった。枝折戸の手触りが朽木のように脆くて、建物の古いことを問わず語りに示していた。植込みを通して見える庭一体に青苔が池の面のように敷き詰っていた。
「礼に来てはならん。」という侍の言葉が脳裡に刻まれているので、伝二郎はおっかなびっくりで裏口から哀れな声で訪れてみた。
「おう、どなたじゃ、誰じゃ?」
こう言ってさらりと境の唐紙を開けたのは、先夜の浪人大須賀玄内自身であった。それを見ると伝二郎は炊事場の上り框へ意気地なく額を押しつけてしまった。丁稚も見よう見真似でそのうしろに平突くばっていた。
「誰かと思えば、其許はいつぞやの町人じゃな――。