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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
07 怪談抜地獄
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,998 字 · 32 页
「そういやあどうもそのようでした。へい、あの玄内の野郎、話をしてても碁を打ってても、気が乗って来るとやたらめっぽうに自身の身体を指の先で押えたり、つまんだりいたしますので。が、どうして親分はそれを御存じですい?」
「まぐれ当りでごぜえますよ。」
と藤吉は笑った。が、すぐと真顔に返って、
「――駿府へずらかってる喜三の奴が、江戸の真中へ面あ出すわけもあるめえ。待てよ、こりゃあしょっとすると解らねえぞ。そっぽを聞いても芝居を見ても――うん、ことによるとことによらねえもんでねえ。喜三だって土地っ児だ。いつまで草深え田舎のはしに、肥桶臭くなってるわけもあるめえ――がと、してみると野郎乙にまた娑婆っ気を出しゃあがって、この俺の眼がまだ黒えのも知らねえこともあるめえに――。」
「喜三って、あの――。」
「しっ!」
と伝二郎の口を制しておいて、
「今一つお訊きしてえこたあ、ほかでもねえが、伝二郎さん、その河内屋の隠居と玄内とを二人一緒に見たことが、お前さん一度でもありますのかえ?」
伝二郎は首を横に振った。
「寮から家主の隠居所までは?」
「小一町もありますかしら。」
「裏から抜けて走って行きゃあ――?」