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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

10 宇治の茶箱

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,760 字 · 24 页

青空文庫

後は簡単だった。

度を失っている清二郎に手伝わせて、重い撰十の屍骸を天井から吊る下げ、踏台として足の下に宇治の茶箱を置き、すっかり覚悟の縊死と見せかけようと企んだのである。

「それにしても親分。」

町役人の番屋から出て来るや否や、番頭の喜兵衛は藤吉の袖を引いた。

「初めから仙太郎と睨みをつけた親分さんの御眼力には、毎度のことながらなんともはや――。」

「なあに。」と藤吉は人のよさそうな笑いを口許に浮べて、

「あっしのところへ注進に来た時に、いつになく皺くちゃの手拭いを下げていたのが、ちらとあっしの眼について、それがどうも気になってならねえような按配だったのさ。」

「そうおっしゃられてみると、なるほど仙太郎はいつも手拭いをきちんと四つに畳んで腰にしておりましたのですよ。」

「それに、お前さん。」

と藤吉は並んで歩みを運びながら、

「お関取りの足場にしちゃ、あの茶箱は少し弱すぎまさあね。」

「踏台から足がついたってね、どうだい、親分、この落ちは?」

と彦兵衛が背後で笑声を立てた。

「笑いごっちゃねえ、間抜め、お取り込みを知らねえのか。」

と藤吉は叱りつけた。そしてまた同伴を顧みて、