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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

01 のの字の刀痕

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,145 字 · 19 页

青空文庫

脚が曲っているせいか、坐っている時よりいっそう小男に見えた。

「彦も昼には帰るはずだ。どれ、じゃ一つ掘り返しに出かけるとしょうか。」

床屋の店を一歩踏み出しながら彼は勘次を顧みた。

「巣へ寄って腹拵えだ――勘、どえらい道だのう。」

それから小半時後だった。二人は首筋へまで跳ねを上げて、汁粉のような泥道を竜泉寺の方へ拾っていた。すぐ後から、これだけは片時も離さない紙屑籠を担いで葬式彦兵衛が面白くもなさそうに尾いて行った。

三

栄太の死骸は町組の詰所へ移されたが、凶事のあった杵屋の家は近所の者が非人を雇って固めてあった。顔の売れている釘抜藤吉は勘次を伴れたままずうっと奥へ通って行った。表口の群衆に混って彦兵衛は戸外から覗いていた。

死体の倒れていた台所ではちょっと辺りを見廻しただけだった。すぐ格子戸へ引き返して、建仁寺を嗅ぐ犬のように、鼻を一つ一つの桟とすれすれに調べ始めた。真中から外部へ向って右手寄り四本目の格子の桟に、例えば木綿針ほどの細い瑕跡があって、新しく削られたものらしく白い木口が現れていた。土間の隅へ掃き溜められて灰をかけた血の中へ指を突っ込んだ藤吉は、その指先を懐紙へ押して見ながら