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すずきもんど

鈴木主水

久生 十蘭

「オール讀物」1951(昭和26)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,827 字 · 26 页

青空文庫

番頭、用人といえばいかめしいが、いずれも能太夫、狂言方、連歌俳諧師、狂言作者などの上りで、そのなかには島田十々六という品川本宿の遊女屋の次男坊までいた。遊興の取持を勤めと心得ている埒もないてあいばかりだが、新規に目附になった押原右内という男は、お家騒動で改易になった越後の浪人者で、御留守居与力をやめて豊後節の三味線弾きになり下った、原武太夫の推薦で大須賀の用人格になったものだが、こんどはまたお糸という娘をお側へ上げ、その功労で大目附の役にありついたという評判だった。

こういう思いきった役替は、そもそも誰の捌きによるのかと、寄り寄り詮議してみたところ、あにはからんや、押原右内一人の方寸から出ていることがわかった。宝永六年の二月、家宣が将軍宣下をすると同時に、綱吉の近臣を残らず罷免した故実をひき、尤もらしい献策をしたのを、政岑がそのままとりあげたのである。聞いたものはみな無念に思い、三河以来、御懇意をねがった譜代の家来も、一朝にしてかような取扱いを受けるのかと、行末を儚んでお暇を願うものが出てきた。

口切りは大番頭千石取津田伴右衛門で、向後、他家へは一切奉公いたすまじき旨、誓を立てて御暇をねがい、つづいて物頭四百五十石、荻田甚五兵衛、寄合五百石、平左衛門、使番大番頭五百石多賀一学などが暇乞いをして々に退散し