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てつのきりつ
鉄の規律
平林 初之輔
「新青年 第一二巻第一〇号」1931(昭和6)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,016 字 · 30 页
是において我が正義党は国民の名により、世界正義の名により、閣下に対し天誅を加うるの余儀なきに至りたることを遺憾とす。既に我が党は中央執行委員会にてこのことを議決せり。しかして、最も近き将来においてこの決議を実行することを閣下に声明せんとするものなり。終わりにのぞみ、我が党の決議はかつて実行されざりしことなきことを記憶せられんことを。 大日本正義党中央執行委員会」
「また大日本正義党か、まるで子供だましのお伽噺じゃないか。昨今の暑さで気のふれた奴のしわざだろう」と東亜局長は面白そうに言った。「昨日の新聞にも、よその家へはいっていきなりこれは俺の家だから出ていってくれなんて言った奴があったな。暑さのために神経中枢の調子が狂った奴だったんだそうだがね。気候が変調だと人間の頭まで変調になってくるもんだ。こんな気狂いの手紙なんか、ほっとけばいいよ。ははは」
彼は秘書官の肩ごしに、ぽいとその手紙を事務机の上へほうりだした。
「ところがそうではないんですよ閣下」と露木は熱心に言った。「警視庁も検事局も、正義党の活動にはこの一年来悩みぬいているんです。党員は八千位だという説もあれば十万もあるという説もあるんですが、いずれにしても大変な数に上っていることは事実なんで、それが社会のあらゆる方面へ入りこんでいるんです。