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ぎんさんじゅうまい
銀三十枚
国枝 史郎
「新青年」1926(大正15)年3月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,863 字 · 73 页
これは当然と云わなければならない。敵を瞞ますには味方を計れ、こういう考えからしたことではあろうが、ともかくも良人の私をして、一度は死をさえ覚悟させたほど、深刻な放縦な行動をとって、心身を鍛えた彼女であった、たかが詐欺師なんかに負けるはずはなかった。
佐伯準一郎氏は恭しく、銀三十枚を彼女に献じた。
そうしてその帰路不幸にも、フリーメーソンリイの会員に、暗殺されてしまったのであった。――佐伯氏を追って行った二人の外人、あれが下手人に相違あるまい。
25
私達は一緒に住むことになった。
最初のうちは変なものであった。何となくチグハグの心持であった。だがそのうちに慣れて来た。
次第に二人は幸福になった。
彼女は昔の彼女になった。相変わらず私をあやしたりした。剽軽なことを云ったりした。
「今日は風が吹きますのよ。冬のように寒い風がね。まきまきするのよ、まきまきをね」
襟巻を巻けというのであった。
「たあたを穿くのよ。ね、たあたを」
足袋を穿けというのであった。
ある時私はこう云って訊いた。
「誰かと公園で媾曳をしたね。刑事が淫売婦だと云っていたよ」
「え、したのよ。