轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

さっかくすうだい

錯覚数題

寺田 寅彦

「中央公論」1933(昭和8)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,152 字 · 18 页

青空文庫

同じことを書いた本が幾種類もあるより、まだ本になっていないことを書いた本が一つでも多く出たほうが読者には便利であるが、著者ならびに出版者にとっては、やはり類型主義のほうが便利であると見える。書物でも、やはりヨーヨーのようなものである。

話はちがうが、せんだって日比谷で「花壇展覧会」というものがあった。いろいろのばらがあった中に、柱作りの紅ばらのみごとなのが数株並んでいた。燃えるような緋紅色の花と紫がかった花とがおもしろく入り交じって愉快な見ものであった。なんという名のばらか知りたいと思ったが、現場には、品種名の建て札もなく、まただれの出品かもわからなかった。数日後にまた日比谷で「ばらの展覧会」が開かれたので出かけて行って、行き当たりばったりに会の係りの人に先日の柱作りの品種を聞いてみたがわからない。そのうちに、あれはたしか横浜のS商会の出品だったから、あちらの同商会の出張所で聞いてみたらいいだろうと教えてくれる人があった。それでさっそくそのS商会の陳列所へ行くと、係りの店員は先日の「花壇展覧会」は見なかったから知らないという。いろいろ問答をしてそこに出陳されている切り花を点検した結果、たぶんそれはローヤル・スカーレットと称する品種であるらしいというくらいのところまではやっとこぎつけることができた。