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さっかくすうだい
錯覚数題
寺田 寅彦
「中央公論」1933(昭和8)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,152 字 · 18 页
いずれもとにかく人間の錯覚を利用するものである。
もしも人間の「目」が少しも錯覚のないものであったら、ヒトラーもレーニンもただの人間であり、A一A事件もB一B事件も起こらず、三原山もにぎわわず、婦人雑誌は特種を失い、学問の自由などという言葉も雲消霧散するのではないかという気がする。しかしそうなってははなはだ困る人ができてくるかもしれない。「錯覚」を食って生活している人がどのくらいあるかちょっと見当がつかないのである。また錯覚からよびさまされて喜ぶ人はほとんどまれである。尊崇している偉人や大家がたちまちにして凡人以下になったりするのではだれでも不愉快である。大概の錯覚は永久にだいじにそっとしておくほうがいいかもしれない。ただ事がらが自然科学の事実に関する限り、それを新聞社会欄の記事として錯覚的興味をそそることだけは遠慮なくやめたほうがいいであろうと思う。何人をも益することなくして、ただ日本の新聞というものの価値をおとすだけだからである。
五 紙獅子
銀座や新宿の夜店で、薄紙をはり合わせて作った角張ったお獅子を、卓上のセルロイド製スクリーンの前に置き、少しはなれた所から団扇で風を送って乱舞させる、という、そういう玩具を売っているのである。