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さっかくすうだい
錯覚数題
寺田 寅彦
「中央公論」1933(昭和8)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,152 字 · 18 页
それが、どれもこれも申し合わせたようにいわゆる「懸崖作り」に仕立てたものばかりである。同じ懸崖にしても、少しはなんとかちがった格好をしたのがあってもよさそうに思われるが、どれを見てもまるで鋳型に入れたようなもので、ばらの枝がみんな窮屈そうな顔をしてからみ合っているのである。こんなにはやらない前の懸崖作りはもう少しリベラリスティックな枝ぶりを見せていたようである。
来客用の団扇を買おうと思って、あちこち物色してみて気のついたことは、われらの昔ふうの団扇の概念に適合するようなものがほとんど影をかくしたことである。丸竹の柄の節の上のほうを細かく裂いて、それを両側から平面に押し広げてその上に紙をはり、その紙は日月の部分蝕のような形にして、手もとに近いほうの割り竹を透かした、そういうものが、少なくもわれわれの子供時代からの団扇の定義のようなもので、それ以外のものは言わば変種のようなものであった。こういう昔の型には、研究してみたらおそらくいろいろな物理学的の長所があるだろうと思われる。このほうが風を生ずる点で、効率がいいという説もあるがこれは研究してみないとわからない。