轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
かぎ
鍵
谷崎 潤一郎
「中央公論」中央公論社、1956(昭和31)年1月、5月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,182 字 · 200 页
私には大層口あたりが好かったので、つい度を過した。私は人に酔ったところを見られるのが嫌なので、飲み過ぎて気分が悪くなると便所へ閉じ籠る癖があるのだが、あの晩もそうであった。私は何十分間ぐらい便所に籠っていたのだろうか。何十分? いや一時間も二時間もではなかったろうか。私はちっとも苦しくはなかった。苦しいよりは恍惚とした気持だった。意識はぼんやりしていたけれども全然覚えがないわけではなく、ところどころ分っている部分もある。あまり長時間便器に跨って蹲踞っていたので、腰や脚が疲れて、いつの間にか金隠しの前に両手をついてしまい、とうとう頭までべったり板の間についてしまっていたことも、うろ覚えに思い出される。そして私は体じゅうが便所臭くなった気がして外へ出たのであったが、その臭気を洗い落すつもりだったのか、まだ足もとがふらついているので人に遇うのが嫌だったのか、そのまま風呂場へ行って着物を脱いだのであったらしい。らしいというのは、何か遠い遠い夢の中の出来事のように記憶に残っているのだが、それから先はどうなったのか思い出せない。(右の上膊部に絆創膏が貼ってあるのは誰かに注射されたのらしいが児玉先生でも呼んだのだろうか)気がついた時はすでにベッドの中にいて、早い朝の日光が寝室を薄明るくしていた。