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かぎ
鍵
谷崎 潤一郎
「中央公論」中央公論社、1956(昭和31)年1月、5月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,182 字 · 200 页
(どうだか怪しいものだけれども)―――が、いずれにしてもそういう目印を考えることは容易でない。一回は成功するかも知れないが、たびたび同じ方法を用いれば裏を掻かれる恐れがある。たとえば爪楊枝を何ページ目かに挟んでおいて、開けるとパラリと落ちるようにしておく。一回は巧く行くとして、二回目からは夫はその爪楊枝を落さないように取り扱い、それが何ページ目に挟んであるかを勘定して、もとの通りに戻しておくであろう。(夫はそういう点は実に陰険なのである)そうかといって一回々々新しい方法を案出することは不可能に近い。私はいろいろ考えて、試みにスコッチ印のセロファンテープの六〇〇番を適当の長さ(測ってみたら五センチ三ミリあった)に切り、帳面の表紙の或る一箇所を選んで、表と裏とをそのテープで封じてみた。(その位置は天から八センチ二ミリ、地から七センチ五ミリの所であったが、テープの長さや貼る位置はそのつど少しずつ変える必要がある)こうすると、中を読むためにはテープを一度剥がさなければならない。一度剥がして、また新しいテープを同じ長さに切り、同じ位置に正確に貼っておくということは、理論上できなくはないにしても、実際にはとても面倒で煩瑣で、できるものではない。