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かがみじごく

鏡地獄

江戸川 乱歩

「大衆文芸」1926(大正15)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,074 字 · 27 页

青空文庫

「こればかりは、止せないよ」

彼はそう言い言いしては、その窓際の望遠鏡を覗くことを、こよなき楽しみにしていましたが、考えてみれば、ずいぶん面白いいたずらに違いありません。私も時には覗かしてもらうこともありましたけれど、偶然妙なものを、すぐ目の前に発見したりして、いっそ顔の赤らむようなこともないではありませんでした。

そのほか、たとえば、サブマリン・テレスコープといいますか、潜航艇の中から海上を眺める、あの装置をこしらえて、彼の部屋に居ながら、雇人たちの、殊に若い小間使いなどの私室を、少しも相手に悟られることなく覗いてみたり、そうかと思うと、虫目がねや、顕微鏡によって、微生物の生活を観察したり、それについて奇抜なのは、彼が蚤の類を飼育していたことで、それを虫目がねや度の弱い顕微鏡の下で、這わせてみたり、自分の血を吸うところだとか、虫同士をひとつにして同性であれば喧嘩をしたり、異性であれば仲良くしたりする有様を眺めたり、中にも気味のわるいのは、私は一度それを覗かされてからというものは、今までなんとも思っていなかったあの虫が、妙に恐ろしくなったほどなのですが、蚤を半殺しにしておいて、そのもがき苦しむ有様を、非常に大きく拡大して見ることでした。