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かがみじごく

鏡地獄

江戸川 乱歩

「大衆文芸」1926(大正15)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,074 字 · 27 页

青空文庫

という文字が、白金のような強い光で現われているのです。

「不思議だね、一体どうしたんだろう」

なんだか神業とでもいうような気がして、子供の私には、珍らしくもあり、怖くもあったのです。思わずそんなふうに聞き返しました。

「わかるまい。種明かしをしようか。種明かしをしてしまえば、なんでもないことなんだよ。ホラ、ここを見たまえ、この鏡の裏を、ね、寿という字が浮彫りになっているだろう。これが表へすき通るのだよ」

なるほど見れば彼の言う通り、青銅のような色をした鏡の裏には、立派な浮彫りがあるのです。でも、それが、どうして表面まですき通って、あのような影を作るのでしょう。鏡の表は、どの方角からすかして見ても、滑らかな平面で、顔がでこぼこに写るわけでもないのに、それの反射だけが不思議な影を作るのです。まるで魔法みたいな気がするのです。

「これはね、魔法でもなんでもないのだよ」

彼は私のいぶかしげな顔を見て、説明をはじめるのでした。

「おとうさんに聞いたんだがね、金属の鏡というやつは、ガラスと違って、ときどきみがきをかけないと、曇りがきて見えなくなるんだ。この鏡なんか、ずいぶん古くから僕の家に伝わっている品で、何度となく磨きをかけている。