轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
かがみじごく
鏡地獄
江戸川 乱歩
「大衆文芸」1926(大正15)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,074 字 · 27 页
あんな驚いたことはありませんね。
「オヤ」
とたまげている私の顔を見て、彼はさも面白そうに笑いながら、さて説明してくれたところによりますと、それは英国でしたかの物理学者が考案した一種の手品で、種はやっぱり凹面鏡なのです。詳しい理窟はよく覚えていませんけれど、本ものの紙幣は箱の下へ横に置いて、その上に斜めに凹面鏡を装置し、電灯を箱の内部に引き込み、光線が紙幣に当たるようにすると、凹面鏡の焦点からどれだけの距離にある物体は、どういう角度で、どの辺にその像を結ぶという理論によって、うまく箱の穴へ紙幣が現われるのだそうです。普通の鏡ですと、決して本ものがそこにあるようには見えませんけれど、凹面鏡では不思議にもそんな実像を結ぶというのですね。ほんとうにもう、ありありとそこにあるのですからね。
かようにして、彼のレンズや鏡に対する異常なる嗜好は、だんだんと嵩じて行くばかりでしたが、やがて中学を卒業しますと、彼は上の学校にはいろうともしないで、ひとつは親たちも甘過ぎたのですね、息子の言うことならば、たいていは無理を通してくれるものですから、学校を出ると、もうひとかどおとなになった気で、庭の空き地にちょっとした実験室を新築して、その中で、例の不思議な道楽をはじめたものです。