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きょうかしのぶんしょう
鏡花氏の文章
「学苑」1933(昭和8)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,456 字 · 7 页
と「波羅葦僧の空をも覗く、伸び縮む奇なる眼鏡」とを持った奇怪な妖術師である。氏の芸術は一箇の麻酔剤であり、阿片であるともいえよう。
事実、氏の芸術境は、日本文学中にあって特異なものであるばかりでなく、又世界文学中に於てもユニイクなものと言えるであろう。その神秘性に於て、ポオ(彼の科学性は全くなしとするも)にまさり、その縹渺たる情趣に於てはるかにホフマンを凌ぐものがあると考えるのは単なる私の思いすごしであろうか。空想的なるものの中の、最も空想的なもの、浪漫的なるものの中の、最も浪漫的なもの、情緒的(勿論日本的な)ものの中で、最も情緒的なもの、――それらが相寄り相集って、ここに幽艶・怪奇を極めた鏡花世界なるものを造り出す。其処では醜悪な現実はすべて、氏の奔放な空想の前に姿をひそめて、ただ、氏一箇の審美眼、もしくは正義観に照らされて、「美」あるいは「正」と思われるもののみが縦横に活躍する。そこに登場する女は、下女の末といえども、悉く、色が抜けるように白くなければならぬ。それは、全く、今の私達の眼から見て、時代錯誤に近い世界――髭の生えた官員様がえらかったり、色々な肩書が法外にものをいったりする世界――なのであるが、そういう時代錯誤的な観念さえもが(更に、氏の作品の構想の幼稚な不自然ささえも)ここでは「鏡花的な