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ながしまのし
長島の死
「紀元」1934(昭和9)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,277 字 · 11 页
このほかにもやっていないとは言えない。一週間ばかりというもの、連日つづけさまに死に就ての已に錯乱した感想を受けとった記憶が二度ばかりあるが、その結果がどうなったことやら私は忘れた。とにかく、毎年春になると一種の狂的な状態になるのである。これは如何ともなしがたい生理的な事柄であるから、仕方がなかった。
私は彼のように「追いつめられた」男を想像によってさえ知ることが出来ないように思う。その意味では、あの男の存在は私の想像力を超越した真に稀な現実であった。尤も何事にそうまで「追いつめられた」かというと、そういう私にもハッキリとは分らないが、恐らくあの男の関する限りの全ての内部的な外部的な諸関係に於て、その全部に「追いつめられて」いたのだろうと思う。たとい恋をかちえても、名声をかちえても、産をなしても、恋を得たことによって名声を得たことによって一人あくことなく追いつめられずには止まないたちの、宿命として何事によらず追いつめられるたちの男であったのだろうと考えている。彼の死にあい、さて振返ってみると、実に凄惨な男であったと言わざるを得ない。彼ほど死を怖れた人間も尠いのであろう。