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ながしまのし

長島の死

坂口 安吾

「紀元」1934(昭和9)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,277 字 · 11 页

青空文庫

ある男が、催眠術によって人間の生命を保ちえないものかと考えて、瀕死の病人に催眠術をかける。丁度死んだと思う頃、呼びさまして話しかけてみると、自分はもう死んでいると病人は言う、そうして断末魔よりも深い苦痛の声をもって苦しみを訴えるのである。それからの連日二十四時間毎に呼びさまして話しかけると、その表情その声は一日は一日に凄惨を極め、遂いに術者も見るに堪えがたい思いとなって術をとくのであるが、とたんに肉体は忽然として消え失せ、世に堪えがたい悪臭を放つところの液体となって床板の上に縮んでしまう。――大体、こんな筋の話であったと記憶しているが、私は長島の危篤の病床で、この物語を思い出していたのである。一つには長島もこの物語を読んでいたからであって、ある日私にそのことを物語った記憶が残っていたからであろう。そのことと関係はないが、彼は私への形見にポオの全集とファブルの『昆虫記』の決定版とを送るようにと家族に言い残して死んだ。

彼の病床での囈言は凄惨であった。一見したところ、とりとめのない支離滅裂な叫びに思われるのであるが、結局のところ、彼の宿命的な一生の間、このどたん場へまで追いつめられてきた最後の一行ばかりを断片的に言い綴っているのであるから、彼の精神史の動きを知る私には、正気のそれよりも激しい実感が分ったので