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かんちょうざじけん

間諜座事件

海野 十三

「日曜報知」1932(昭和7)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,989 字 · 21 页

青空文庫

「はァ、モシモシ」

と、その美しいレビュー・ガールは電話口の前で唇を動かした。

「ああ、もしもし」レビュー・ガールの電話に答えたのは、意外にも区裏の公衆電話の乙の方を占領している黄外套の同志だった。

「もしもし。あんたは、柳ちどりさん?」

同志の声は悠々と落着いている。それもその筈、一方の旗頭UX3鯛地秀夫だったから。

「ええ、そうよ」と女が云った。

鯛地秀夫は、ツと手をあげて、隣の公衆電話甲の同志QX7左馬三郎へ合図をした。

(よし、撃て――といえ)

というサインだ。鯛地は豪胆にも尚も柳ちどりを電話機に釘止めにして置こうと努力した。

「柳ちどりさんに、いいものを進呈――」

撃て、――という命令は、屋根裏の同志の耳に達して、スワと機関銃の引金を引いた。

どどどどどどどど、どどどどどどどッ!

霰のような銃丸が、真白な煙りをあげて、向いの窓へ――

柳ちどりは、声を立てる遑もなく全身を蜂の巣のように撃ち抜かれ、崩れるように電話機の下にパタリと倒れた。

「命中したぞォ」

それが同志への最後の報告だった。

次の瞬間に、屋根裏の機関銃手も公衆電話室甲乙の黄外套も、それから又、同志帆立も、飛鳥の如く現場から逃げ去った。