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かんちょうざじけん

間諜座事件

海野 十三

「日曜報知」1932(昭和7)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,989 字 · 21 页

青空文庫

見よ、確かに死んだ筈の義眼の副司令が、真紅な禿の衣裳を着て、行列の中を歩いているのだ。これが驚かずにいられようか。

「シ、しまった!」

と気がついたときは、もう既に遅かった。隣席の五十坂を越したと思う男が、年齢の割には素晴らしい強力で、弦吾の利腕をムズと押えた。

「話は判っている筈だ。さア静かに向うへ来給え」

その一語で、すべては終った。魚眼レンズを透した写真を調べてみるまでもなく、大声をあげたりして、もう明瞭な失敗をしたQX30だった。もう再度、生きて此のレビュー館は出られなくなった。

万事休す!

*

義眼の副司令の女を、柳ちどりと思っていたのは笹枝弦吾の惜しい誤解だった。柳ちどりは確かに機関銃で殺された踊り子だった。この柳ちどりは、第五景に出る段になって、急に烈しい頭痛に襲われたのだった。出場は迫るし、遂に已むなく副司令が柳ちどりに代って出たわけだった。そこで彼女は柳ちどりと間違えられるようなことになった。次の第六景、「奈良井遊廓」の場で正しい持役で出演したわけだった。柳ちどりでなければもう海原真帆子に決っている。皆さんは其の名前が、「禿」