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とうそう
闘争
小酒井 不木
「新青年」1929(昭和4)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,079 字 · 38 页
ピストルを買わせたのも狩尾君かも知れぬ。そうして、みごとに自説を証明し、併せてそれを僕に示そうとする目的を達したのだ。勿論、その遺書や投書やピストルが、incendiarism の役をつとめたことはいう迄もなく、北沢事件そのものは、実に天才的科学者の行った人間実験に外ならぬのだ」
こゝまで語って先生は、ほッと一息つかれた。僕は先生の推理のあざやかさに、いわば陶然として耳を傾けて居たが、最後のところに至って、ひやりとしたものが背筋を走った。
「それでは先生、たとい直接手を下されずとも、北沢は狩尾博士が……」
先生は、手真似で「静かに!」と警告された。「だから、はじめに君にことわってあるではないか。狩尾君は天才だよ。到底僕の及びもつかぬ段ちがいの天才だよ。こうして思い切った実験は、アカデミックな考え方にとらわれて居る僕等の金輪際為し得ざるところだ。それは世間普通の考え方から言えば、悪い意味にもとれるが、とに角、科学によって自然を征服して行こうとするには、これくらいのことを平気でやってのけねばなるまい。
「いや、このことについては、これ以上深入りしては論ずまい。