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とうぎゅう
闘牛
国枝 史郎
「新趣味」1922(大正11)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,976 字 · 20 页
(閣下の甥の侍従官が、何故罪悪を犯したかと申すに、最の理由がございます。それは閣下も申された通り、生意気だからでございます! 新思想家だからでございます。即、彼は身分を忘れ――侍従官であるという身分を忘れて、皇室の敵であるサンジカリズムを研究していたのでございます。そうして何時か彼はそれに心酔して了ったのでございます。ところで閣下も御承知の通りサンジカリズムの主義と云えば――尠くも西班牙のサンジカリストは此西班牙の皇室を破壊することが其主義であって主義を実行する場合には、どんな手段をも辞しません。そこで彼等サンジカリストは、皇室の最も大切にする「サラセンの耳飾」を奪い取って、宮廷の人々を驚かそうと考えついたのでございます。そうして夫れの実行者として一人の主義者を此宮廷に住み込ませたのでございます。それは一体誰かというに彼の牛飼人でございます。
彼が主義者だということを、どうして私が知ったかというに、彼と後庭で語った時、彼が盛んにサラゴッサ辺の訛を使ったのが其一つ※(始め二重括弧、1-2-54)何故かと申しますと、サンジカリストはサラゴッサに最も多いからで※(終わり二重括弧、1-2-55)。もう一つは握手をした時に、その手が余りに柔かかったので元からの牛飼人では無いということを観破したからでございます。