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とうぎゅう

闘牛

国枝 史郎

「新趣味」1922(大正11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,976 字 · 20 页

青空文庫

運ばれる屍骸の後を追って私は屠牛小屋へ行って、窃そりと牛の腹を裂いたのでございます。

在ると思った耳飾が其処に無いではございませんか! 眼の前が真暗になりました。私は落胆し切ったのですが、併し次の一刹那に、私は啓示を受けました。矢庭に私は持ってたメスを、牛の左の耳の穴へ、突っ込んだのでございます。そうして抉ぐったのでございます。果して、其処から、黒金剛石の、耳飾が転がって出て来ました!)

手紙は再び一転した。

(事件は簡単でございました。甥御の盗み出した耳飾を牛飼人が素早く受け取って、それを闘牛の左の耳へ、隠し込んだのでございます。

然るに私はそうとは思わず、耳飾を盗みは盗んだものの、後から閣下が追跡するので、隠し所に困まったあげく、突嗟にそれを飼葉に混ぜて、牛に食わせたと斯う思いました。それで私は何より先に飼葉の事を訊いたのでした。すると、飼葉はやらなかったが水は遣ったという事を、あの牛飼が云いましたので、扨は其水へ耳飾を入れて飲ましたものと一図に思い腹を裂いたのでございます。

それは兎に角、耳飾は、必ず牛の何処かにあると、このように私が感付いたのは、牛小屋へ私が這入り込むや否や、牛が突っかかって来たからです。