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およしのおんりょう

阿芳の怨霊

田中 貢太郎

在线阅读田中 貢太郎《阿芳の怨霊(およしのおんりょう)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,310 字 · 5 页

青空文庫

由平ははっとして顔をあげた。由平の前に若い女が坐っていた。それは死んだはずの阿芳であった。阿芳の顔は蒼くむくみあがって、衣服はぐっしょりと濡れていた。由平は椀を取って阿芳の顔へ投げつけた。椀は壁に当って音をたてた。由平は続けて手あたり次第に膳の上の茶碗や小皿を投げた。其の物音に驚いて主翁があがってきた。

「どうなさったのです」

主翁は怒っていた。由平ははっとして我にかえった。

「鼠が出て来て煩さいから、追ったのだよ」

「鼠ぐらいで、そう乱暴されちゃ困ります」

主翁は小言を云いながら出て往った。由平はそこで元気をつけるために酒を喫んだ。酒に弱い由平は一本ですっかり酔って床の中へ入った。そして、眼を覚ましたのは夜半の一時比であった。由平は咽喉が乾いたので水差を取ろうとした。すると由平の指に水に濡れた布片のような物が触れた。由平はおやと思って眼をあげた。其処には何人かが立っていた。

「何人だ」

それは阿芳の姿であった。燈の無い真暗の室の中で阿芳の姿ははっきり見えた。

「又、出たな」

由平は飛び起きた。床の間の鹿の角の刀架に一本の刀が飾ってあった。由平はそれを取って阿芳に斬りつけた。