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あなんとじゅじゅつしのむすめ

阿難と呪術師の娘

岡本 かの子

「読売新聞」1928(昭和3)年5月6日~6月19日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,425 字 · 58 页

青空文庫

阿難よ。およそ人間が罪を犯し、その罪を拭い去るに三つの方法がある。一つはその罪に倍増した善業によってこれを償うことである。二つには生命の前に誠を披瀝して懺悔することである。三つには罪性の空なる道理を悟って、道理に悖る執着の己れを捨て放つことである。

然し人々には、各持って生れた機根の相違があるゆえ、人々は自分の機根に於てこのうちのどれか一つを選んで宜しい。阿難よ。お前は出家の身の上だ。道に対し「易き」を求め「難き」を避けてはならぬ。悔の牙に噛み攻められ、殆ど自己の信任を失して仕舞うほどの心を引立てて、面を焦さんばかりの罪にまともに向き合って、その中より生命の浄化の秘密を探り出す般若の行道、これこそもっともお前に相応したものである。尊き阿難よ。お前は今、それを成しつつある。

阿難よ、お前は幼い時出家して今日まで有漏のさわりを竹の節を抜ように順々に抜いて来た。そして僅に残って居る一節二節は、骨肉に対するやみ難き愛着の情であった。この執着は春の道の辺の陽炎のように、有りとして踏めば無くなる。無しとして顧みれば在る。随分始末に悪い煩悩なのだ。

愛は愛を呼ぶ。